僕らはtetoに恋をしている

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こんにちは。寒いのは戦争と嘘の次に嫌いです。細身の体型だとほんとに寒さが身に染みて、マジで生死に関わるんじゃねえか、ってレベルで、バイト帰りとか早朝なんか凍えてる。


気づけば2018年も終わりが見えてきてます。人生の体感スピードは加速度的にはやくなっていくなんて話は色んな人が言うけれど、どうやらこれは単なる俺老けちゃったよ自慢というわけではなさそうだぞ、と。で思うんですけど、これって一年間の出来事として思い出せることが年々減っていることを逆説的に証明しているのではないでしょうか。思い出して欲しいんですけど、本当は思い出はもっとあるはずなんですよ。

でも、僕らの意志とは無関係にどんどん生活は続いていき、当然似たような日々が続くことも多いから忘れてしまうこともある。音楽を非可逆圧縮したように、毎日見ていたはずの夕景がいつもよりちょっと綺麗にみえるとか、そんな些細なことは思い出せなくなる。

誰かが言っていたように、これに対抗できるほぼ唯一の手段は、日記やブログで記録しておくことなんです。で、いつか自分が振り返ったとき、ああ、この時も自分はかっこいい音楽聴いていたんだな、って思えるようにしたくて、レビューを書くに至ったわけです。

一発目誰について書くか悩みましたよ、でも、お金かけた金額、ハマリ具合、2018年のブレイク具合、そして時代を問わずかっこいいと思えるか、それらを考慮したら、彼ら以外にいないでしょう。tetoです。

 

 

僕らはtetoに恋をしている

おそらくこのブログを見に来ている皆さんは、純粋に音楽が好きで、tetoが好きで、って人ばかりでしょう。読んでくれてどうもありがとう。

2018年、tetoの勢いは本当に凄まじかった。ついに見つかってしまったか、という感じ。初のフルアルバムのリリース、22ヶ所(うち10ヶ所ワンマン)をめぐる全国ツアー、ロッキンやCDJなどフェスにもひっぱりだこだった。僕も仙台とファイナルの恵比寿公演に足を運ぶことができた。

常々思うのだが、tetoのファンは彼らに恋をしている。マジで。きっとこれを読んでくれている方にも心当たりはあるだろうし、同じようなことを言っている人は何人もみたことがある。tetoの話題になると途端にノロケ話を披露するかのように饒舌になるし、早口になるし、なんならちょっと表情も明るくなっている。完全に心ここに在らず、になる。日本の音楽は信仰の対象として扱われやすいなんて話はよく聞くけれど、ほかと比較しても明らかに違う。愛されてんなあ。

で、冷静に、tetoのなにがこれほどまでに僕らを魅了し、魅了させ続けているのか。ちょっと考えてみた。

 

 

歌詞の魔力

tetoの歌詞って、たとえ曲名伏せて新曲紹介されても、あ、これtetoの歌詞だって直ぐわかると思うんですよね。そのくらいの魔力が、ある。みんな大好きBASEMENT-TIMESでは、

tetoの歌詞性って語感とか存在しない語彙表現とか普通言わない文字列とか、そういうメロディの力を借りないと成立しない言葉になってて、歌でこそ、歌詞でこそ意味があるギリギリの構造になっている。なっているから、かっこいい

なんて評されている。これには全く同感で、日常では絶対使わないような言葉順だったり表現が散りばめられていて、それがtetoの歌詞世界をがっちり構築している。

言葉数が多いバンド、という話題になるとほぼ必ずってくらい、RADWIMPSが取り沙汰されるけど、野田洋次郎の歌詞(特に4枚目あたり)は登場人物もしくはRADの思想や曲のストーリーが割と明確になっていることが多いと個人的に思っている。主人公と相手がいて、それぞれこんなことを思っているかを野田独自の価値観と言葉選びをもって描かれ、聴く側は圧倒され尽くしてしまう。

一方tetoの歌詞は、これとは対極に位置しているのではなかろうか。言葉数が多くマシンガンのように歌い上げられるのに、その外側を想像できる余地がある。曲自体のストーリーはもちろんあるけれど、全てを語るわけではない。


teto 36.4

teto - 36.4(MV) - YouTube

この曲も、「頬のチークや目元の赤ライン」の持ち主について、素性はほぼ皆無といっていいほどわからない。その代わり、モノの描写が素晴らしく丁寧なんですよね。

敢え無く床に広がった湿った色褪せたライトグレーのジャケット

なんとなく買って半端なく頭痛を助長させる缶コーヒー

間接的、小説的なアプローチで、心の機微が読み取れる。だからこそ聴く側の現状や自身を曲に投影しやすい。出てくる固有名詞もセンスに溢れてて、岡崎京子やら、ヘルマンヘッセやら、リタ・ヘイワースやら。憧れるし、ロマンを見出す。

あと、一人称が極端に少ない。ときに自分の心情を代弁してくれる。ときに優しく語りかけてくれる。それも~~しなさいとか、~~するからこそすばらしい、って語り方は決してせず、すべて肯定してくれる。言ってしまえば、つらくてどうしようもない夜なんかに大切な人からかけて欲しいような言葉だ。自分が曲のなかに極めて自然に入り込んだところで、そんなこと言われたら、そりゃ好きになる。

 

teto 拝啓

teto - 拝啓(MV) - YouTube

そして、一番の決め所で、これですよ。

刹那的な生き方、眩しさなど求めていないから

浅くていいから息をし続けてくれないか

完全に撃ち抜かれる。

僕もこの曲が一番すき。同じように拝啓を一番好きな曲にあげるひとはけっこう見かける。それもわかるよ。最後の最後唯一求めてきたものがこれですよ。おめでとう、tetoが優勝です。

 


音楽が好きな不器用たちへの救い

ここまで散々書いてきましたが、あくまでもこれは音源の魅力であって、tetoはライブが一番いいです。これは僕の筆舌に尽くしがたいというか、もうライブ行くんだ。

散々現実で嫌なことがあっても、ライブハウスのなかでだけはありのままでいいんだ、なんてことはいろんなミュージシャンがいうけれど、それを本当の意味で実現している。

仙台でみたときは、一回だけ拝啓のときにダイブするひとがいたけど、あれは久しぶりにみた良いダイブだった。抑えきれない感情が爆発していたのがわかったし、そのくらい演奏もすばらしかった。

これは持論なんだけど、特に邦楽においては、ライブってつまるところバンドマンその人に会いに行くってのが全てだと思うんです。会いに行って曲を聴いて、言葉をもらって元気をもらってくる。その手段のひとつに音楽がある。前提として、もちろん音楽=目的ではあるけれど。で、tetoの場合、メンバーの人間性に惹かれているひとも多いでしょう。そういう意味では彼らが本を出していたとしても人気はでるんじゃないかな。

 

恵比寿ではいわゆるライブキッズのすがたもみられて、音楽を聴くために来ているひとが嫌な思いをしていて悲しかった。これはあとで別記事で書こうと思う。

 


というわけで、tetoの歌詞の部分からレビューしてみました。素敵な言葉を爆音に乗っけて叫んでるいい奴らなんて、そりゃ好きになるでしょう。僕らはtetoに恋をしている、分かっていただけましたでしょうか。

ではまた。