言葉にならない感情が増えるたび
わたしはどんどんめくらになる
次第に濁る東の雲の色彩と
羊の群れとセンドウする商人の横顔と
氷をかじって頭痛がするように
淋しさが誤った回路につながり
脳内で一瞬火花が散った
さよなら、遠いところへ
「君がいない」以外完璧なところ
傘も持たずに大丈夫なの、と
言った君の手は湿ってた
あの赤い髪が好きだった
君の赤い髪が好きだった
だからもう
柵を越え降り注ぐ星たちはまるで
飽和して結露した命のようで
わたしは何も言えなかった
風が吹いた
風が吹いて全部がほどけた
君だけでよかったのに
さよなら