思い返すことと愛情が溶け合うような夜は、なんだかやけに年老いたような気分になるもんだ。
あの人はいまころ、あの人ならきっと今、あの街で世間とか言う実体のないものに戦いを挑んでいるんだろうな。
思い返すことと愛情は、いつからか区別がつかなくなる。そんな夜もある。
初めて会ったあの日の渋谷の人混みと、次に会えた日にの高い塔の麓、それと春の陽気と、電話越しの7月の湿っぽい夜と、あなたの歌と、あなたの写真と、あなたの絵と、あなたの言葉が、こぼれ落ちないように、私は、思い返すのです。
いろんな歌を聴く。
いろんな歌に見出そうとする。
君の秘密は遂に知らないままだ。
「僕という人間は結局のところ、どこかよそで作られたものでしかないのだ。そして全てはよそから来て、またよそに去っていくのだ。」
寂しさも忙しさも疲れも輪郭を無くして、月の光ばかりがやけにきりきりと光る。
そんな夜もあるもんだ。
思い返すだけでは枯れてしまうんだよなあ
留まれば矛盾になるのかもしれない。
そんな夜もあるもんだ。
明日ははやいからもう寝よう。