yeti let you noticeと、世界の美しさと、パラドクス

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こんにちは。


もうそろそろ忘年会真っ盛りって感じですかね。

忘れたいことをああやって引っ張りだして飲んで忘れるってどう考えても無理ですよね。

出来るのはせいぜい自分の中で整理をつけて区切りをつけることぐらいで、そもそも忘れたいことの原因になった奴ほど大概同席しててもう意味が分からない。

基本的に僕は、中高のときの部活の友達くらいしか気の置けない関係のひとがおらず、それ以外の飲み会はだいたい中盤ころには気を遣うのにも疲れて一人でグラスとにらめっこしてます。帰りは好きな音楽を爆音で聴きながら歩いて、あーどーすりゃいいんですかね、もうね。

その割には人並みに寂しくもなるので、どっかに救いを求めるんですよね。

で、今回のバンドの話。


不安や自分に向けての後悔。人と接することにも、恨むことにも疲れてしまう。

それでも生きていたいと思ってしまう人のための世界がある。たとえばこのバンド、yeti let you noticeの世界。

 

 


弱者の音楽

yeti let you notice「pilgrim」MV - YouTube


間違いなく、大ステージで大歓声を浴びるタイプのバンドではない。むしろこのバンドに対してそうなったら日本人の精神健康が心配になる。

このバンドに対する第一印象はとにかく繊細だ、繊細に書かれた水彩画みたいだ、ってこと。

いるじゃないですか、こいつ文房具に例えたら絶対油性マジックだろうな、みたいな人。松岡修造とか。雰囲気の濃度というか、魂のエネルギーの濃度がやたら高いひと。

このバンドは、なんだろう、派手さはないが、街の文房具屋に売っているなかで一番細い線が描ける筆、とでも言えばいいのだろうか。油性マジックマンとは逆。

どっちが良い悪いって話じゃなくてね。


変拍子がそこそこ出てくる。ファルセット多めで歌い上げられる。マスロック的な印象はない。手法的にゼロではないのだろうけれど、自分たちの楽曲の表現手段としてふさわしいものを探していたら、結果的にそういうアプローチになったのだろうか。このあたりは詳しくないのであんまり深追いはしないよ。

ネガティブな内容を歌うバンドは今まで数多くある。それらに対してはもっと退廃的な世界観があるように思うんです。朝の占いの対して「これから眠るのに感じ悪いんですけど」と言い放ったりとか。現実に対して音楽というフィルターをかけている。現実のなかで絶望し、果てに一瞬の光が生まれたりする。

 

 

内向とパラドクス

yeti let you notice 「ori」MV - YouTube

 

基本的に、自己防衛の術を持っているひとにはこの種の音楽は必要ないんですよね。というかそもそも音楽自体必要ない。

そこまで強くはなれなかったひとは、曲のなかに夢を見たり、一緒に悲しみに沈んだり、救いを求めてしまう。

yeti let you noticeは、彼らの楽曲の世界を訪れるという表現がいい。

毎日聴くようなタイプではなくても、人付き合いに疲れたりしてしまったりしたような、ある種の人間にはきっとそういう場所が必要なんです。そういう世界のひとつとして、彼らの音楽は存在しているようにも、思える。


あるいは、まさに「檻」というのもいいかもしれない。外界からの攻撃から身を守ってくれる。守ってくれる代わりに、中にいる者も外には出られない。弱い自分や過去や辛さを閉じ込めて置き去りにして、次の場所に行くための音楽。

そうやって曲のエネルギーが内向すればするほど、それでも生きていたいというメッセージが浮かび上がる。あくまでも、yeti let you noticeの描き出す世界は美しい。

 

utopia - YouTube

「ねえユートピア

いつかそんな場所が

私のことを待ってくれている

いつかそんな日々がほら

いつかそんな場所がほら」

 

つい最近アップされた新曲。曲調はだいぶ明るくなったかも。

でも、一貫して内向きに進み、逆説的に美しさが滲む構造は持ち続けている。

希望と喪失の入り混じり具合のバランス感覚が、あまり他にないなって思う。絶妙なバランスが儚さを一層深いものにしている。とても良いです。

https://t.co/0pFq0xNlKi?amp=1

 

 

とはいえ


もうちょい活動のアピールをしてもよいのではなかろうか、なんて思ってしまう。

あとは、ライブ。生で観たことないけど、どうなんだろう。YouTubeの動画みた限りでしか言えないが、生だと油性マーカー人間の方がバッコシ行けるから、繊細さ故にインパクト勝負では不利になりそう。でも刺さる人には届いて欲しいな。


yeti let you notice。

決して大流行するタイプではないけれど、狭く深く聴けるのではないでしょうか。

 

HP:https://sites.google.com/site/yetilyn/